cos109.5°の値
突然ですが問題です。
炭素原子の結合距離(炭素原子の中心間距離)をrとします。
ダイヤモンドの結晶の格子定数aはいくらですか?
・・・
わかりましたか?
よく勉強している人には余裕かもしれませんが、結晶が苦手な人には難しいかもしれません。
また、解けた人もおそらく補助線を引いたりして、ひらめきが全てを決める数学の空間図形の問題みたいになってしまったでしょう。
しかし、このページで教える"cos109.5°"の値を用いれば、この手の問題は全く機械的に楽に解けるのです。
とりあえずまず正統派な解き方をしましょう。
[解法1]
下の図の緑の小さな立方体に着目してください。
これを取り出します。
この立方体は中心に1つと、頂点にねじれているように4つの炭素原子が配置しています。
すると1つの頂点と中心との距離はrになります。
(※ 結合しているC-C距離がrである。なので隣り合っているからと言って「1つの面の対角線の長さがr」と思ってはいけない。)
さらに、これより立方体の対角線の距離は2rとなります。
したがってこの立方体の一辺の長さは、三平方の定理より
2r ÷ √3 = (2/√3)r
である。
単位格子に戻る。
この単位格子の一辺の長さは先ほどの小さな立方体の一辺の長さの二倍なので、
a = (4/√3)r
となり、求められた。<終>
どうでしょうか?
わかりましたか?
できる人はできるのでしょうが、結構元からやり方を知っていないと難しいです。
特に小さな立方体を見つけることと、その対角線の長さに気づくのが難しいと思います。
しかし"cos109.5°"を用いれば全く機械的に、かつ単純明確に求めることができます。
では、"cos109.5°"を使う方法に移りましょう。
まず始めに、"cos109.5°"そのものについての説明をします。
例えば知っての通り、メタンは正四面体構造をしています。
そして、教科書には∠HCHが約109.5°と書いているでしょう。
要するに正四面体の中心と頂点を結ぶ線分同士のなす角は約109.5°なのです。
正確にはこの109.5°と言うのは大体の値で、本当は無理数です。
より数学的にこの109.5°を表現すると
「cosθ=-1/3 を満たす角度θ」
となります。
上で書いちゃいましたが、要するに
cos109.5° = -1/3
なのです。(証明は一番最後に載せときます。)
高校の数学では有名角(30°、60°、45°...)しか習いませんが、それに準ずる数学的に美しい角度なのです。
では
cos109.5° = -1/3
がわかれば何がわかるでしょうか。
余弦定理をもう習いましたか?
習ってないと厳しいですが、三平方の定理の上位版で
a2 = b2 + c2 - 2bc・cos∠A
という定理です。
すると、正四面体の頂点と頂点の距離dは
d2 = r2 + r2 - 2rr・cos 109.5°
= 8/3 r2
∴ d = (2√6 /3)r
となります。
で、さっきのメタンを例にとれば、水素原子同士の距離は、C-H結合距離を108.7pmとすると
(2√6 /3) × 108.7pm = 177.5pm
と計算できたりします。
では、話を戻して"cos109.5°"を用いてダイヤモンドの格子定数を求めてみましょう。
[解法2]
結合している3つの炭素原子、例えば下の図の水色で示したところを考えます。
正四面体型炭素なので、示す角度は約109.5°です。
したがって余弦定理よりこれらの結合していない炭素原子同士の距離dは
d2 = r2 + r2 - 2rr・cos 109.5°
= 8/3 r2
∴ d = (2√6 /3)r
またdは単位格子の底面の対角線の半分である。
したがって三平方の定理より、
a = 2d / √2
= 2(2√6 /3)r / √2
= (4√3 /3)r ( =(4/√3)r )
となり求められた。<終>
こっちのほうが断然簡単ではないでしょうか。
確かに計算には余弦定理を使いますが、
カクっと曲がったC-C-Cを1つ見つけるだけで事が済んだわけです。
また、正四面体であれば炭素である必要はないので、他の結晶の問題にも使えることが多いです。
特に、もっとややこしい4配位のイオン結晶の場合にこの"cos109.5°"は本領を発揮します。
例えば 結晶〜限界イオン半径比〜 の問題の一番下の「クイズ」に"cos109.5°"が使えるので、ぜひやってみてください。
付録:「cos109.5°= -1/3」である証明。(ベクトル使います。)
また太字のaは"aベクトル"を表します。
大学になると"→"は書かなくなりこうなります。
"→"を表記しにくいパソコンでの文書などでも用いられるので、覚えときましょう。
○ 正四面体の中心と各頂点を結ぶ線分同士がなす角θの計算(証明)
中心から頂点への長さが1の正四面体を考える。
a・b = b・c = c・a = 1×1×cosθ = cosθ
|a|2 = |b|2 = |c|2 = |d|2 = 1
-d = a + b + c
⇒ |d| = |a+b+c|
= √(|a|2+|b|2+|c|2+2a・b+2b・c+2c・a)
= √(3+6cosθ) = 1
∴ cosθ=−1/3
以上です。数学ばっかりでしたね!!
突然ですが問題です。
炭素原子の結合距離(炭素原子の中心間距離)をrとします。
ダイヤモンドの結晶の格子定数aはいくらですか?
・・・
わかりましたか?
よく勉強している人には余裕かもしれませんが、結晶が苦手な人には難しいかもしれません。
また、解けた人もおそらく補助線を引いたりして、ひらめきが全てを決める数学の空間図形の問題みたいになってしまったでしょう。
しかし、このページで教える"cos109.5°"の値を用いれば、この手の問題は全く機械的に楽に解けるのです。
とりあえずまず正統派な解き方をしましょう。
[解法1]
下の図の緑の小さな立方体に着目してください。
これを取り出します。
この立方体は中心に1つと、頂点にねじれているように4つの炭素原子が配置しています。
すると1つの頂点と中心との距離はrになります。
(※ 結合しているC-C距離がrである。なので隣り合っているからと言って「1つの面の対角線の長さがr」と思ってはいけない。)
さらに、これより立方体の対角線の距離は2rとなります。
したがってこの立方体の一辺の長さは、三平方の定理より
2r ÷ √3 = (2/√3)r
である。
単位格子に戻る。
この単位格子の一辺の長さは先ほどの小さな立方体の一辺の長さの二倍なので、
a = (4/√3)r
となり、求められた。<終>
どうでしょうか?
わかりましたか?
できる人はできるのでしょうが、結構元からやり方を知っていないと難しいです。
特に小さな立方体を見つけることと、その対角線の長さに気づくのが難しいと思います。
しかし"cos109.5°"を用いれば全く機械的に、かつ単純明確に求めることができます。
では、"cos109.5°"を使う方法に移りましょう。
まず始めに、"cos109.5°"そのものについての説明をします。
例えば知っての通り、メタンは正四面体構造をしています。そして、教科書には∠HCHが約109.5°と書いているでしょう。
要するに正四面体の中心と頂点を結ぶ線分同士のなす角は約109.5°なのです。
正確にはこの109.5°と言うのは大体の値で、本当は無理数です。
より数学的にこの109.5°を表現すると
「cosθ=-1/3 を満たす角度θ」
となります。
上で書いちゃいましたが、要するに
cos109.5° = -1/3
なのです。(証明は一番最後に載せときます。)
高校の数学では有名角(30°、60°、45°...)しか習いませんが、それに準ずる数学的に美しい角度なのです。
では
cos109.5° = -1/3
がわかれば何がわかるでしょうか。
余弦定理をもう習いましたか?
習ってないと厳しいですが、三平方の定理の上位版で
a2 = b2 + c2 - 2bc・cos∠A
という定理です。
すると、正四面体の頂点と頂点の距離dはd2 = r2 + r2 - 2rr・cos 109.5°
= 8/3 r2
∴ d = (2√6 /3)r
となります。
で、さっきのメタンを例にとれば、水素原子同士の距離は、C-H結合距離を108.7pmとすると
(2√6 /3) × 108.7pm = 177.5pm
と計算できたりします。
では、話を戻して"cos109.5°"を用いてダイヤモンドの格子定数を求めてみましょう。
[解法2]
結合している3つの炭素原子、例えば下の図の水色で示したところを考えます。
正四面体型炭素なので、示す角度は約109.5°です。
したがって余弦定理よりこれらの結合していない炭素原子同士の距離dは
d2 = r2 + r2 - 2rr・cos 109.5°
= 8/3 r2
∴ d = (2√6 /3)r
またdは単位格子の底面の対角線の半分である。
したがって三平方の定理より、
a = 2d / √2
= 2(2√6 /3)r / √2
= (4√3 /3)r ( =(4/√3)r )
となり求められた。<終>
こっちのほうが断然簡単ではないでしょうか。
確かに計算には余弦定理を使いますが、
カクっと曲がったC-C-Cを1つ見つけるだけで事が済んだわけです。
また、正四面体であれば炭素である必要はないので、他の結晶の問題にも使えることが多いです。
特に、もっとややこしい4配位のイオン結晶の場合にこの"cos109.5°"は本領を発揮します。
例えば 結晶〜限界イオン半径比〜 の問題の一番下の「クイズ」に"cos109.5°"が使えるので、ぜひやってみてください。
付録:「cos109.5°= -1/3」である証明。(ベクトル使います。)
また太字のaは"aベクトル"を表します。
大学になると"→"は書かなくなりこうなります。
"→"を表記しにくいパソコンでの文書などでも用いられるので、覚えときましょう。
○ 正四面体の中心と各頂点を結ぶ線分同士がなす角θの計算(証明)
中心から頂点への長さが1の正四面体を考える。a・b = b・c = c・a = 1×1×cosθ = cosθ
|a|2 = |b|2 = |c|2 = |d|2 = 1
-d = a + b + c
⇒ |d| = |a+b+c|
= √(|a|2+|b|2+|c|2+2a・b+2b・c+2c・a)
= √(3+6cosθ) = 1
∴ cosθ=−1/3
以上です。数学ばっかりでしたね!!