分子のカタチ


水分子の形
アンモニア分子の形
メタン分子の形

分子には立体的な形がある。

水は折れ線、アンモニアは三角錐、メタンは四面体・・・・

確かにこれらの有名な分子の形は反射的に即答できるくらいに
しっかり覚える必要がある。

しかし

HCHO(ホルムアルデヒド)の形は?

SO2の形は?

NO2の形は?

リン酸の形は?

・・・

この世には無数の分子があり、それらの形を全て単に暗記するのは無理である。

というよりも、化学は覚えてるだけではダメで、その理由を答えられることをも求められる。

ではどういう根拠で分子の形が決まるのか?

まず簡単な分子の形から説明してみよう。



―簡単な分子;水・アンモニア・メタン―


まず一番と言ってもいいほど有名なメタンの形を考えよう。

メタンは言わずもがな正四面体型である。

その理由はルイス構造式から導かれる。


まずメタンのルイス構造式を書いてみよう。



この構造式を見ると、(最外殻に)電子対は4つあることがわかる。

電子対はその名の通り電子の対であるから、マイナスの電荷を持っている。

しかしお隣さんの電子対もマイナスである。

すなわちマイナス・マイナスで電子対同士はお互い反発しあう

一番自然なことを考えると、全部がお互いに反発しあうのでお互いに一番遠くへ離れたがるだろう。

しかし球形の中心原子(この場合C)を中心に反発して逃げるので、
ある一つの電子対から逃げすぎると背後の別の電子対と近づいてしまう。

すると、全てがお互いに一番離れるためには、電子対は中心に対して均等にばら撒かれるはずである。

正四面体の形は、4つの頂点がお互いに全て109.5度に一番遠くへ配置されている。

なのでメタンは正四面体なのである。

4つの頂点(電子対)が空間的に均等にばら撒かれる非常に自然な形なのである。




次にアンモニアのルイス構造式を書いてみよう。



これは3つの共有電子対と1つの非共有電子対がある。

非共有電子対にはその先に原子はないが、電子対に変わりはないので同じように反発する。

すると同様に4つの電子対は正四面体の頂点になる。

しかし今回はうち一つが原子がついていないでただの電子対である。

ただの電子対は見えないと考えて、ノーカウントとする。

すると、中心のNと底の3つのHとなる。

したがって、形は三角錐となる。




最後に水について。

同様にルイス構造式を書く。



すると2つの共有電子対と2つの非共有電子対で、またしても電子対は合計4つである。

したがって同様にこれらは正四面体の4つの頂点になる。

すると、今度はうち2つだけがHなので、中心のOと二つのHで折れ線になる。



以上で簡単な分子の形の根拠がわかった。


また、これらの簡単な分子は正四面体を基本としていたが、下で解説するような二重結合を持つ分子や第三周期以降の原子が中心となる分子等は正四面体を基本とするとは限らない。



―少し複雑な分子;HCHO・SO2・NO2


つぎに少し複雑な分子について考えてみよう。

まず二重結合を持つHCHOから。

同様にルイス構造式を書いてみよう。



ここでさっきと違うところは、C=Oの二重結合があるところである。

しかしこれも簡単に考えることができる。

CとOの間には電子対が2つあるが、まさに「間に」2つあるので「同じような方向に」2つある。

すなわち「CとOをつなぐ電子対」と一塊に考えてしまっても中心からの方向に関しては問題ない。

すると、要するに

ホルムアルデヒド分子の形


となり、3方向に電子対があると考えられる。

同じように電子対同士は反発するので空間的に3方向に電子対はばら撒かれる。

3方向に均等にばら撒くと正三角形になる。

(実際はHとOの原子の大きさが違ったりするので、角度は120度からは少しずれる。)

したがってホルムアルデヒドは平面三角形型分子である。

(2つのHは等価なのでいわば"二等辺三角形型"である。)





つぎにSO2について考えてみよう。

またしても同様にルイス構造式を書く。



これも二重結合を一塊に考えると、要するに

二酸化硫黄分子の形


すなわち1つの非共有電子対と2塊の共有電子対であるので、3方向にばら撒けばよい。

したがってこれも三角形の頂点方向に電子対は配置される。

しかしこの3つのうち1つは非共有電子対で見えないと考える。

すると中心のSと2つのOの折れ線型となるとわかる。





最後にNO2について考える。

まず同じようにルイス構造式を書きたいのだが、おそらく書こうとすると悩むことになるだろう。

なぜならNは5個、Oは6個の最外殻電子をもつから、
合計17個の電子になり絶対に全部が2ずつの対になれない!

2つの電子がペアの電子対を書くと、ルイス構造式は以下のようにならざるを得ない。



しかしこれでよい。

このような分子を奇数電子分子といいオクテット則を満たしていない分子に分類される。

世の中にはこのように原則と合わない分子も多くある。

形を考えよう。

一匹狼の電子がいるが、これも同様にマイナスの電荷を持つから電子対と反発する。

するといままでと全く同じように考えることができる。



二酸化窒素分子の形
要するに1つの孤立電子と2塊の共有電子対で、3方向にばら撒けばいい。

すると結局三角形の頂点方向に1つの孤立電子と2つの共有電子対は配置される。

孤立電子も非共有電子対と同じく見えないと考えると、NO2分子の形は折れ線型であるとわかる。

また、孤立電子対はマイナスの電子一つ分であり、マイナスの電子2つ分の共有電子対と比べると反発力が弱い。

なのでNO2分子はひしゃげた形になるだろうという予想ができ、実際そうなっている。


以上でルイス構造式が書ければ大抵の分子の形がわかるはずです。

ここまで読んでくれた方には非共有電子対や共有電子対等の合計が"頂点の数"となり、
それを基本にして共有電子対以外の見えない電子対を除外して形を決めると言うことがわかっただろう。

また、同じ折れ線型分子でも、水は正四面体を基本とするから∠HOHは109.5度に近くなり、
二酸化硫黄は正三角形を基本とするから∠OSOは120度に近くなるという角度の予想もできるようになったでしょう。

実際、∠HOHは104度、∠OSOは119度になりこの考え方は理にかなっていることが予想できます。



ちなみに、周期表で下の原子が中心になっている分子ほどは予想から少しずつずれてきます。

例えばPH3やAsH3はNH3と同じ電子の構造なので角度は109.5度に近くなるはずだが、
実際は90度に近くなっていくという事実等。

なぜでしょうか。

上で解説した考え方は実は簡易的な判断方法で、厳密に考えるには
原子軌道混成軌道と言うものを考える必要が出てきます。

高校の教科書には載っていませんが、参考書にはよく載っています。

これは難しいですが、分子の形を考えるのに重要な概念になってきます。

さらに細かい角度の値(水分子は109.5度からずれて104.45度である等)を計算するには
分子軌道計算という恐ろしく高等な物理学;量子力学を駆使する必要があります。

しかし細かい数字より大体の形を考えるほうが先決になるので、
今回の考え方で色んな分子の形が予想できるようにして下さい。




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