質問レス/コメントレス 過去ログ(2010年)


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(2010/12/30 Q1さん投稿)
丁寧に質問に答えていただいて感激です!ありがとうございました!
pHの測定が0.02刻みが限界ということは知りませんでした。勉強になりました!
(●●●(←伏せときます)という本を使っているのですが、やはり載っていませんでした)
僕は浪人中で、このサイトはとても勉強の励みになってます。



<回答> (2010/12/30)

こちらこそ本っ当に有難う御座います。

稚拙な回答でしたが、今後ともこのサイトを宜しくお願いします。

詳しくは2010/12/30のブログにも書いてます。


2010/12/31
↓ちょっと修正&加筆しました。
主に青色のところです。
特に青太字で書いてある「低い」の部分が重要な変更点です。
間逆の「高い」と書いていました。
すみませんでした。





(2010/12/28 Q1さん投稿)
Q1 補充計算問題の問5&6について。電離度が0.05より大きいので
  [H+]=√CKの近似までは使えないと思うのですが、どうでしょうか?



<回答> (2010/12/30) 2010/12/31訂正

これは非常に良い質問です。

が、非常に難しいことでもあります。

結論を先に言うと

「 [H+] = √CKで計算しても大丈夫 」

です。

もちろん、Q1さんの言うようにこの近似ではなく「もうひとつの近似」を使うのも正しいのですが・・・


Q1さんがお知りでしたら二度手間になり申し訳ないですが、まず[H+]の近似から説明します。


ある酸HAの水溶液において化学平衡

HA H++A-
C(1-α) Cα
 
H2O H++OH-
hh

が成り立っているとする。

まず化学平衡の式より、電離定数Kは

  ・・・・(A)

となります。ただしαは酸HAの電離度で、hは水の電離で生じた水素イオン濃度です。

この式より、



であるので、αの大きさの指標として√(K/C)が使えます。


(i) √(K/C) < 0.05のとき

電離度αは1に比べて十分小さいとみなせます。

よって 1-α ≒ 1 となるため

  ・・・・(A)’

一方



これに(A)’×Cを辺々足してまとめると

・・・・(a)

ここで、cやKが小さすぎない限りKw << CKなので

  ・・・・(1)

⇒ 一般的な弱酸(酢酸等)の近似
  例:0.1 mol/l 酢酸水溶液

※ (a)式を使う場合(すなわち水の電離が無視できないとき):
 ⇒ √(K/C)が小さいかつKCが小さい場合 = Kが極めて小さな弱酸(K < 10-12)。


(ii) √(K/C) ≧ 0.05のとき

電離度αは大きいため1-αはそのまま。

一方、普通 Cα >> h であるため、Cα + h ≒ Cα (水の電離無視)となるので、



αについて解くと

  ・・・・(2)

⇒ 微妙に強い酸[Kが大きい酸](硫酸の二段階目の解離など)、
 または濃度Cが 高い 低い場合の近似
 例:10-4 mol/l 酢酸水溶液

※ Cα >> h であると言えない時(すなわち水の電離が無視できないとき):
 ⇒ 濃度があまりにも小さいとき。(C < 10-6 mol/l)

◎ 弱塩基の場合は[H+]と[OH-]を全て入れ替えればよい。



以上より、√(K/C)の大きさで適切な近似を使わないと誤差が出ます。

問5の場合、√(K/C) = 0.132であるため(2)の近似を使うべきです。

代入して計算すると

[H+] = 1.24×10-4 mol/l

pH = 3.91

となります。

一方もし(1)式で計算すると

[H+] = 1.32×10-4 mol/l

pH = 3.88

となります。

[H+]は有効数字的に全く許されないほど誤差が出ていますね。

だから(2)での答えが正解だ!!!

・・・確かに、御もっとも、そうです。

が、実はこの誤差は許容されてしまうのです。


まず、なぜそもそもαが0.05を境に1-αの細かい値を無視してよいのか。

実は有効数字的な問題もありますが、あと「平衡定数の誤差」(平衡定数もきっちりじゃない)という観点から定められています。

これは普通の高校の教科書にも、ほとんどの参考書にも書かれていないと思います。
(大学の教科書には書いてます。)


そして大学の教科書(クリスチャン分析化学I)にはこう書かれています;

「pH測定の絶対的な正確さは、0.02 pH単位より良くなることはない。」

pH測定計は原理的に、どんなに頑張って精度を上げても0.02刻みでしか測れない。

理論でもそうなんだから、実在する普通のpH測定計は0.05刻みくらいでしか測定できない。(例えばコレ

すなわちpHの値の小数点第二位を正確に求めるということは無意味なのである。
(もちろん0.08とか変わるのならちゃんと計算しなければならないのだが・・・)

だから問5では pH = 3.91 でも pH = 3.88 でも、限界の0.02ほどしか値が変わらないのでどっちも正解なのである。

なので、√(K/C)が0.05より大きくても、酢酸等大抵の弱酸の場合気にせず[H+] = √(CK)を使えばいいのです。



「じゃあ、結局いつ(2)のちゃんとした近似計算をすればいいんだ!!!」

確かに上の考え方では(1)と(2)両方計算してからじゃないとわかりませんが、
√(K/C)がどう考えても大きい時(例えば濃度がやたらと低いとき)は(2)を使うべきでしょうね。

が、大学入試の問題では大抵の場合「ただし二段階目の解離の電離度は大きい」とか「α << 1ではない」とか、
1-αは無視できないよということが書かれていると思います。

こういうことが書いてあるときは(2)を使いましょう、大学の先生が(1)と(2)の計算を事前に比べてくれているから。

また、同じ感じで「水の電離が無視できない」とか書いてあったら(a)式等を考えれば良いです。

ですが、難関大の問題ならもしかしたら書いてないかもしれないので、
怪しければ√(K/C)を計算して(2)式で計算してより正確な解を出すのが無難かもしれませんね。

結局のところ、入試の場合は√(K/C)≧0.05なら(2)式を使ったほうが無難ということになってしまいました。

しかし入試問題を解こうとして(2)式の「√」の計算でうまく計算が出来ないときは、
出題者が(i)と(ii)の小さな誤差を気にしてないんだな〜っと考えて、あんまり気にせず(1)で計算すれば良いでしょう。


以上です。

むしろ余計ややこしかったかも知れないことを謝ります。

しかし、普通の問題集が酢酸水溶液の[H+]を特に記載なく√KCで計算しているのはこのためです。

もし今まで引っかかっていたものが取れたなら幸いです。


そしてまたしてもクリスチャン分析化学Iより;

「計算を簡単にすることは、平衡定数はそれほど正確なものでないことも多いので(±10%よりもよくないこともある)、
それほど深刻に考える必要はない。」


※ 解答で右側に書いていたのが(2)で求めた答えだったんですが、今回さらに細かく計算すると
ちょっと値が変わったので訂正しておきます。

あと、あの解答の書き方はかなり不親切だったのでそれも含めて。

それと、問題は「pH求めよ」でしたがlogの計算は関数電卓ないと厳しいですね。これも注釈入れときます。

丁寧なご質問ありがとうございました!!

もしまた何かあればお気軽に投稿してください。



<蛇足>

高校生向けサイトに書くのはあまりよくないと思うのですが、実はもっと核心的な問題があります。

化学平衡

aA + bB ⇔ cC + dD

において、平衡定数Kは

  ・・・・(X)

であるという式。

これ自体正確ではありません。

この(X)式のKというのは、成分AやCの濃度を変えるとビミョーに変わってしまうのです・・・

「ある理想的な場合に限り」(X)式が「良い近似」になるだけという・・・

"活量係数"という概念を導入することでKを平衡「定数」として一定にすることが出来ますが、非常に難しいです。

だから結局、もともと近似である(X)式においてpHを細かく正確に求めようとするのは無理がある話しなのです。






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